社会人から看護師になるには? | 学校えらびとその実態、金銭面の補助について

看護師のなりかた

社会人経験者から「年齢で不利になるのでは?不合格にされるのでは?」との声を聞くことがありますが、実態は、社会人経験者のほうがむしろプラスになることの方が多いです。

看護師をめざす社会人経験者の実態

社会人経験者が大切にされる理由

社会人経験者が大切にされる理由は、学生よりも豊富な人生経験や社会経験があるからです。これまで培ってきた経験を看護に活かすことができます。年齢に上限要件を設けている学校はあまり見たことがありません。それどころか、最近は、入学試験に社会人枠を設ける学校が増えてきています。

日本社会に不足する看護職員を補うための対策の1つとして、大卒・短大卒者などを含む社会人経験のある学生の受け入れをより積極的に取り組むことが求められています。これから転職を検討されている社会人経験者の皆さん、看護の業界は皆さんを大歓迎です。挑戦の一歩を踏み出していただくことを心待ちにしています!

実際のデータ

日本看護学校協議会が2012年度に行った調査では、総在籍数に占める社会人経験者の割合は23.7%です。また、2020年度の看護師学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査によると、看護師をめざして大学や短期大学・専門学校に入学した人の総数は、全国で54,315人です。そのうち、25歳以上の社会人経験者は2,975人(うち40歳以上は375人)です。その割合は、専門学校で10.3%、短期大学で2.9%、大学で0.5%と、専門学校の割合が多くなっています。

社会人から看護師になるための年齢・制限について知っておこう

社会人から看護師を目指す際に、多くの方が気になるのが「年齢」や「入学制限」の問題です。実際のところ、年齢を理由に看護師への道をあきらめる必要はありません。ここでは、看護学校の年齢制限や、実際にどんな年齢層の社会人が看護師を目指しているのかを詳しく解説します。

看護学校に年齢制限はある?

基本的に、看護学校に年齢制限はありません。高校卒業後すぐの学生はもちろん、30代・40代・50代から入学する社会人も増えています。入試で求められるのは学力と志望動機、そして看護師になりたいという強い意志です。

私立・公立問わず、看護師を養成する学校では年齢に関係なく受験が可能です。ただし、一部の奨学金制度には年齢制限が設けられている場合があるため、事前に確認しておくことが大切です。

また、面接では「なぜ今、看護師を目指すのか」という動機が重視されるため、社会人経験を活かした明確な志望理由を用意しておくと好印象につながります。

実際に入学している社会人の年齢層とは?

看護学校には、20代後半〜40代前半の社会人が多く入学しています。中には50代で入学し、卒業後に現場で活躍している人もいます。

特に近年は、子育てがひと段落した主婦層や、第二の人生として医療職を目指す中高年の方も増加傾向にあります。年齢層が幅広いため、クラス内でも「年齢が浮く」といった心配は不要です。

「社会人から看護師」という選択肢は、年齢に縛られず、誰にでも開かれた道です。大切なのは、自分自身の目標と覚悟を持って、一歩を踏み出すことです。

社会人から看護師になるまでのステップを分かりやすく解説

社会人から看護師を目指すには、計画的なステップが必要です。限られた時間や費用の中で、どうすれば最短ルートで資格を取得できるのか、また准看護師から正看護師への流れについても解説します。

最短ルートで資格取得を目指すには?

社会人から看護師になる最短ルートは、3年制の看護専門学校への入学です。高校卒業の資格があれば受験可能で、卒業と同時に看護師国家試験の受験資格を得られます。

最短で看護師になるためには、次のようなルートが一般的です。

  1. 看護専門学校(3年制)へ入学
  2. 卒業後、看護師国家試験を受験
  3. 合格後、正看護師として働く

このルートなら、社会人からでも最短3年で看護師として現場デビューが可能です。

さらに、夜間部や通信制を選べば、働きながら通学することも可能。奨学金制度や、病院が学費を負担してくれる「看護師養成奨学金制度」なども活用すれば、経済的な負担を抑えることができます。

准看護師から正看護師を目指す流れ

もうひとつのルートとして、まず准看護師になり、働きながら正看護師を目指す方法があります。

このルートは以下のステップになります。

  1. 准看護師養成所(2年制)に入学
  2. 准看護師資格を取得し、就職
  3. 働きながら看護専門学校(2年制)に進学
  4. 卒業後、看護師国家試験に合格

准看護師として一度現場で経験を積むことで、正看護師の勉強に対する理解も深まり、実践力を身につけながらステップアップできます。

時間はややかかりますが、働きながら学ぶことができるため、収入を得ながら資格取得を目指す社会人にとって魅力的な選択肢です。

社会人から看護師になるメリット・強みとは?

「社会人から看護師になるなんて遅いのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、実は社会人経験者だからこそ持っている強みやメリットがあります。ここでは、採用面や現場で活きる社会人経験について紹介します。

社会人経験が就職活動で評価されやすい理由

医療の現場では、患者さんへの対応やチーム医療の中でのコミュニケーション能力が非常に重視されます。社会人経験がある人は、ビジネスマナーや対人スキルが自然と身についており、現場で即戦力として評価されやすいのです。

採用面接でも「社会人経験をどのように看護に活かしたいか」が問われることが多く、事務職・販売職・介護職など、異なる業界の経験が看護師としての視野を広げる材料として高く評価される傾向があります。

異業種の経験が看護現場で活きる場面

例えば、接客業で培った「相手の気持ちを汲み取る力」は、患者さんとの信頼関係を築く際に役立ちます。IT業界出身なら、電子カルテやデジタル機器の操作に強く、チーム内で重宝されることもあるでしょう。

また、育児や介護の経験がある方は、患者さんやそのご家族に対して、より寄り添ったケアを提供できる強みがあります。

このように、社会人から看護師になった人には、他の学生にはない「経験」という武器があり、それが現場でも高く評価されるのです。

社会人から看護師になるための学校えらび

看護専門学校

看護専門学校の修業年限は3年間のため3年課程と呼び、2020年度現在では、全国に558校(うち定時制7校)あります。認可を受けた3年課程の学校や養成所を卒業すると同時に、看護師国家試験の受験資格を得ることができます。

国家試験の日程や会場については、毎年8月1日の官報で公表されます。例年、看護師国家試験は2月中旬に行われ、合格発表は、試験の約1ヶ月後の3月25日前後に行われます。合格後は、各自で看護師籍登録のための申請をし、その登録が完了すると、手元に看護師免許証が届き、晴れて国家資格を取得した看護師として働くことができます。日本の看護師免許は一生涯有効な終身免許ですが、諸外国の多くは更新免許制になっています。

社会人入学枠

看護専門学校によっては、社会人入学枠を別に設けて入学試験を実施している学校もあります。社会人経験者にとって、仕事や子育てをしながら進学の準備をすることは大変です。しかし、社会人入試制度を導入している専門学校は、論文と人物考査のみとしている学校が多いため、過去問を中心に対策を講じることで、受験が可能です。学校によりちがいはありますが、定員の20〜30%が社会人募集枠となっているところが多いでしょう。一例として、社会人入学試験は、一次試験が論文試験、二次試験は人物考査によって行われ、受験倍率は3〜4倍前後という状況の学校があります。

現役専門学生との関係

「現役の学生さんとは年齢差があるので、学校生活が不安」という声がたまに聞かれますが、実態は、そのような心配はあまり必要がないケースが多いです。全校生徒の約4割が社会人経験者という学校もありますが、入学後すぐに打ち解け、どの社会人経験者からも「思っていたより溶け込みやすかった」との声が多く聞かれます。現役学生は、社会人経験者から、その行動や考え方、判断の仕方など学ぶことが多くあり、一目置いて尊敬しているようです。

学び方

夜間・週末クラスも用意されており、働きながら学ぶことが可能です。

4年制大学

多くの社会人経験者が、学費や教育年限などから、専門学校への進学を決めます。しかし、大学で看護を学問として体系的に学びたいという方、将来、研究職として看護を極めていきたい方などは、大学への進学が選択肢に入ってきます。

正確な数字はわかりませんが、大手進学塾の2021年度入試用看護医療系入試特集号によると、社会人入試制度を取り入れている学校は、国公立大学12校、私立大学49校、短期大学4校と紹介されています。募集人数は1〜2名や若干名としている学校がほとんどで、狭き門になっています。入試方法は、小論文と面接が多く、一部の学校では学力試験を課しているところもあります。

准看護師からのステップアップ

他には、まず准看護師として働きながら、経験を積んだり、職場での研修を受けることで、将来的に看護師資格を取得するという方法もあります。

金銭面の補助

看護師として社会に貢献したいという志をもった方が、経済的な理由で夢を諦めてしまうことのないように、さまざまな制度があります。ここでは主に活用頻度の高い、奨学金制度や専門実践教育訓練の教育訓練給付金について、紹介します。

入学する学校の奨学金制度を活用する方法

それぞれ学校によって、貸与の要件や条件、返済の有無や就労による返済免除など、種類も金額もさまざまです。また、一定の以上の成績要件を満たす学生に対し、特待生制度や給付型奨学金制度を設けているところもあります。

専門実践教育訓練の教育訓練給付金を活用する方法

2014年10月から教育訓練給付金の支給内容が拡充されました。雇用保険の被保険者期間が通算して2年以上ある人が、厚生労働大臣の指定を受けている看護師養成所の講座を受講する場合に、教育訓練経費のうち50%相当額(年間上限40万円)、さらに資格取得し、就職などした場合には教育訓練経費のうち70%相当額(3年間上限168万円を超える場合、その金額から教育訓練期間中に支給した額との差額)が追加で支給される制度です。入学を考えている学校が指定を受けているかどうか、あらかじめ確認をしておく必要があります。

おわりに

ここまで読んでいただいてありがとうございます。これからのキャリアが少しでも明確になり、将来の看護師としての成功につながれば幸いです!

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