認定看護師になるには? | 取得の流れと費用の目安

看護師のキャリア
  1. 認定看護師とは?
    1. 3つの役割
    2. 認定看護分野
  2. 認定看護師の資格を取得する流れ
    1. 認定看護師の資格取得にかかる費用(目安)
    2. 認定看護師になるための具体的な分野
  3. 認定看護師制度の改正について
    1. 認定看護師制度の主な改正点
    2. A課程とB課程の違いとは?
    3. B課程認定看護師ができる「特定行為」とは
  4. 認定看護師と専門看護師・特定看護師との違い
    1. 専門看護師(CNS)との違い
    2. 特定看護師との違い
    3. 自分に合った資格の選び方
  5. 認定看護師資格取得後の働き方と活躍の場
    1. 病院内での役割
    2. 訪問看護ステーションでの役割
    3. 教育・指導分野での活躍
  6. 認定看護師資格取得をサポートする奨学金制度
    1. 日本看護協会の奨学金制度
    2. 病院独自の奨学金制度
    3. 自治体が提供する支援制度
  7. 認定看護師資格取得のための教育機関情報
    1. A課程教育機関(特定行為研修を含まない)
    2. B課程教育機関(特定行為研修を含む)
    3. 教育機関ごとの入試情報や特徴
  8. 認定看護師資格取得後の更新・再認定について
    1. 資格更新の必要性と流れ
    2. 更新に必要な研修・学会参加
    3. 再認定審査のスケジュール
  9. 認定看護師資格取得のメリット・デメリット
    1. 取得するメリット
      1. 専門性が高まりキャリアアップにつながる
      2. 職場での評価・待遇が向上する可能性がある
      3. 患者さんへのケアの質向上につながる
    2. 取得するデメリット
      1. 学費や生活費など経済的負担が大きい
      2. 仕事と学業の両立が困難になる場合がある
      3. 資格取得後の役割にプレッシャーを感じることも
  10. まとめ

認定看護師とは?

認定看護師とは、「高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師」のことです。

3つの役割

①【実践】個人・家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術および知識を用いて水準の高い看護を実践する、②【指導】看護実践を通して看護職に対し指導を行う、③【相談】看護職等に対しコンサルテーションを行う

周りから頼りになる存在と認識されると、医師からも相談が寄せられます。自分の専門能力が発揮され、医療チームに貢献していると感じられ、やりがいがもてるようになります。また、現在の診療報酬制度では、さまざまな加算を算定するための要件として認定看護師が専従で仕事をしていることが求められています。たとえば、感染管理にかかわる加算を算定する要件として、感染管理認定看護師が感染対策室に専従で配置されていることが必要です。これらは、病院の医療収入に大きくかかわりますので、認定看護師の必要性は高まっています。

認定看護分野

認定看護分野は医療ニーズの変遷にともなって徐々に増えてきています。これまでの21分野のA課程認定看護師教育期間は、2026年度をもって終了することが決まっています。並行して、2020年度から「特定行為研修」を組み込んだ19分野のB課程認定看護師教育期間の教育が開始されました。A課程修了認定看護師も、所定の研修を受けることでB課程認定看護師となることができますし、引き続きA課程終了認定看護師として活動できます。

認定看護師の資格を取得する流れ

資格の取得条件としては、「看護師として5年以上の実践経験(そのうち3年以上専門分野の経験)」があることで、「日本看護師協会が定める認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格する」ことで取得できます。認定看護師教育の期間については、A課程:600時間以上・6か月以上1年以内/B課程:800時間程度・1年以内 が目安です。

認定看護師の資格取得にかかる費用(目安)

  • 認定看護師教育 入試検定料:約5万円
  • 入学金:約5万円
  • 授業料:約70万円(教育機関によりかわります)
  • 実習費:約10万円(ほかに教材やコピー、パソコン代などがかかります)
  • 認定看護師 認定審査料:51,700円
  • 登録料:51,700円

資格を取得してからも5年ごとに更新する必要があり、更新の際にも審査・費用が発生します。勤務する施設によっては、受講費等の補助があります。

認定看護師になるための具体的な分野

  • 生殖看護認定看護師:
    • 特徴: 妊娠、出産、不妊治療などに関する看護ケアに特化した分野です。産科病棟や産婦人科クリニックでの経験が求められます。
    • 資格取得までのステップ: 産科での実務経験が必要で、その後に生殖看護認定看護師試験を受験します。
  • 摂食嚥下障害看護認定看護師:
    • 特徴: 食事や嚥下に関する問題に焦点を当てた看護ケアを提供する分野です。コミュニケーション能力が重要です。
    • 資格取得までのステップ: 摂食嚥下障害の診療に従事し、その経験を基に試験を受験します。
  • 糖尿病看護認定看護師:
    • 特徴: 糖尿病患者の看護に特化したスキルを持つ看護師です。糖尿病のケアにおいて高度な専門性が求められます。
    • 資格取得までのステップ: 糖尿病患者との経験が必要で、その後試験を受験します。
  • 乳がん看護認定看護師:
    • 特徴: 乳がん患者の看護に特化した資格で、がん治療やケアに関する高度な知識が求められます。
    • 資格取得までのステップ: 乳がん看護の経験が必要で、その後試験を受験します。
  • 認知症看護認定看護師:
    • 特徴: 認知症患者の看護に特化し、コミュニケーションや環境調整において高度なスキルが求められます。
    • 資格取得までのステップ: 認知症ケアに携わり、その経験をもとに試験を受験します。
  • 脳卒中看護認定看護師:
    • 特徴: 脳卒中患者への看護に特化し、急性期から回復期まで包括的なケアが求められます。
    • 資格取得までのステップ: 脳卒中患者のケア経験が必要で、その後試験を受験します。
  • 皮膚・排泄ケア認定看護師:
    • 特徴: 皮膚トラブルや排泄に関する看護に特化したスキルを持つ看護師です。専門的な技術が求められます。
    • 資格取得までのステップ: 皮膚・排泄ケアの経験が必要で、その後試験を受験します。

認定看護師制度の改正について

認定看護師制度は、近年大きな改正が行われました。現場で働く看護師にとっても影響の大きい変更点が含まれており、資格取得を目指す方は最新の情報を把握しておくことが重要です。

認定看護師制度の主な改正点

2020年度から、日本看護協会が実施する認定看護師制度が大きく変わりました。従来は1年制の教育課程を修了すれば認定看護師資格を取得できましたが、現在は「特定行為研修」を含む新たな教育制度が導入されています。

主な改正点として、

  • 特定行為研修を含む教育課程(B課程)が新設
  • 認定看護師教育課程が1年から6か月に短縮
  • 従来の認定看護師資格保持者も更新時に特定行為研修を受けられる

これにより、より専門性が高く、医療現場で自律的に判断し行動できる看護師の育成が進められています。

A課程とB課程の違いとは?

改正後、認定看護師の教育課程はA課程とB課程に分けられました。

  • A課程:特定行為研修を含まない6か月間の教育課程
  • B課程:特定行為研修を含む1年程度の教育課程

A課程は従来型に近く、専門知識と技術を身につけることに重点を置いています。一方、B課程は特定行為研修を含むことで、医師の指示がなくても一定範囲で患者さんに対する医療行為ができる看護師を養成することを目的としています。

B課程認定看護師ができる「特定行為」とは

B課程を修了した認定看護師は、「特定行為」と呼ばれる38区分の医療行為を、医師の包括的指示のもとで実施できるようになります。

具体例として、

  • 中心静脈カテーテル挿入時の合併症対応
  • 気管チューブ交換
  • 創傷処置におけるデブリードマン

などがあります。これにより、患者さんの状態変化に即座に対応できるため、現場での役割が一層拡大しています。

認定看護師と専門看護師・特定看護師との違い

認定看護師と混同されやすい資格に、専門看護師(CNS)や特定看護師があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した資格選びが可能になります。

専門看護師(CNS)との違い

専門看護師(CNS)は、看護のスペシャリストとして、複雑な患者さんの問題に対するケアを提供し、チーム医療を牽引する役割を担います。認定看護師が「特定分野の熟練者」であるのに対し、専門看護師は「看護ケア全体を俯瞰し、包括的に判断する能力」を求められます。

特定看護師との違い

特定看護師は、「特定行為研修」を修了した看護師の総称です。認定看護師B課程修了者も特定看護師に該当しますが、特定看護師は認定看護師資格に関係なく取得できるため、制度上は別物です。

自分に合った資格の選び方

キャリアプランに合わせて選ぶことが大切です。

  • 臨床で患者さんに直接ケアを提供したい → 認定看護師
  • 看護研究や教育にも携わりたい → 専門看護師
  • 医療行為も行いながら現場で活躍したい → 特定看護師

認定看護師資格取得後の働き方と活躍の場

認定看護師資格を取得すると、その後の働き方や活躍の場が広がります。専門性が高まることで、看護師としてのキャリアアップの機会が増え、患者さんへの質の高いケアを提供することができます。ここでは、認定看護師資格取得後に期待される役割についてご紹介します。

病院内での役割

病院内で認定看護師として働く場合、専門的な知識や技術を活かし、チームの一員として患者さんの治療に貢献します。例えば、救急医療やがん看護、慢性疾患管理などの分野で、高度な看護技術を必要とする患者さんに対して、ケアを提供します。また、病院内での役割として、他の看護師の指導や教育を担当することもあります。専門的な看護スキルを持つ認定看護師は、病院全体の看護の質向上に貢献できる存在です。

訪問看護ステーションでの役割

訪問看護ステーションでは、認定看護師が患者さんの自宅に訪問し、在宅でのケアを提供することがあります。特に、がんや重篤な疾患を患う患者さんに対しては、緩和ケアや痛みの管理、栄養管理など、専門的な看護技術が求められます。また、訪問看護ステーションの立場で、他の看護師への指導や研修を行い、チーム全体の専門性を高めることも重要な役割です。

教育・指導分野での活躍

認定看護師は、看護師の教育・指導分野でも重要な役割を担います。看護学生や新任看護師への教育に携わるほか、他の看護師に対する専門的な研修を実施します。これにより、看護現場全体のスキルアップを図り、患者さんに対する看護の質を向上させることができます。また、医療機関や看護協会での研修講師としても活躍する場があります。

認定看護師資格取得をサポートする奨学金制度

認定看護師資格を取得するための学費や生活費の負担を軽減するために、さまざまな奨学金制度が提供されています。これらの制度を利用することで、資格取得にかかる経済的な障壁を乗り越えることができます。以下に代表的な奨学金制度をご紹介します。

日本看護協会の奨学金制度

日本看護協会では、認定看護師資格取得をサポートする奨学金制度を提供しています。主に、看護師が専門分野の研修を受けるために必要な費用を支援するもので、返済義務のある奨学金と返済不要の助成金があります。資格取得後の一定期間、指定された病院で勤務することが求められる場合がありますが、経済的な負担を軽減できるため、多くの看護師が利用しています。

病院独自の奨学金制度

多くの病院では、認定看護師資格取得をサポートするために独自の奨学金制度を設けています。病院が提携する教育機関で認定看護師資格を取得する際の学費を補助する制度があり、学費が全額または一部支給されることがあります。さらに、奨学金を受けた場合、一定期間病院に勤務することが求められる場合もあります。

自治体が提供する支援制度

一部の自治体では、看護師の専門性向上を支援するために奨学金制度を提供しています。これらは地域の医療機関で働く看護師が対象となることが多く、自治体の医療体制を強化するために設けられています。自治体が提供する支援制度では、生活費の支援もある場合があり、地方での看護師不足を解消するための取り組みとして注目されています。

認定看護師資格取得のための教育機関情報

認定看護師資格を取得するためには、指定された教育機関で所定の課程を修了する必要があります。以下では、認定看護師資格取得のための教育機関情報についてご紹介します。

A課程教育機関(特定行為研修を含まない)

A課程教育機関は、認定看護師資格取得のための基礎的な教育を提供する機関で、特定行為研修は含まれていません。この課程では、専門分野に必要な知識と技術を習得し、認定看護師資格を取得するために必要な基本的な要件を満たします。特定行為研修が含まれていないため、幅広い専門分野に対応した教育が行われます。

B課程教育機関(特定行為研修を含む)

B課程教育機関では、特定行為研修を含む認定看護師資格取得のための教育が行われます。特定行為研修を受けることで、特定の行為(例:注射、薬の調整)を患者さんに行うためのスキルを身につけることができます。この課程を修了することで、より高度な看護技術を習得し、特定分野において専門的な役割を果たすことができるようになります。

教育機関ごとの入試情報や特徴

教育機関ごとに入試方法や特徴が異なるため、自分の目的に合った機関を選ぶことが重要です。例えば、学費や場所、学習スタイル(通学・通信)などの要素を考慮することが求められます。また、入試情報としては、看護師としての実務経験や学力試験が求められる場合があり、入学前にしっかりと確認しておくことが必要です。

認定看護師資格取得後の更新・再認定について

認定看護師資格は、取得後に更新や再認定の手続きが必要です。資格を維持するためには、定期的な更新が求められ、専門性を維持するための研修や学会参加が義務付けられています。

資格更新の必要性と流れ

認定看護師資格は一定期間ごとに更新が必要です。更新の際には、所定の期間内に指定された研修や学会に参加し、実務経験を積むことが求められます。資格を更新しないと、認定看護師としての資格が失効することがあるため、期限を守って手続きを行うことが重要です。

更新に必要な研修・学会参加

資格更新には、専門的な研修や学会参加が求められます。これらは、看護師としての知識や技術を最新のものに保つために必要です。研修内容は、所属する専門分野に関連する内容が中心となり、学会に参加して最新の研究成果を学ぶことも重要な要素です。

再認定審査のスケジュール

再認定審査は、更新の際に必要な手続きの一環です。再認定審査のスケジュールは、認定看護師が所属する分野や所属機関によって異なりますが、通常は定期的に実施されます。審査に合格すると、再び資格が更新され、引き続き認定看護師として活動することができます。

認定看護師資格取得のメリット・デメリット

認定看護師資格を取得することには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。資格を取得する際には、これらの点をしっかりと理解しておくことが大切です。

取得するメリット

専門性が高まりキャリアアップにつながる

認定看護師資格を取得することで、特定の分野における専門性が高まります。これにより、看護師としてのキャリアが進展し、高度な技術を必要とする医療現場で活躍することができます。専門的な知識とスキルを持つ看護師として、患者さんに質の高いケアを提供できることは、キャリアアップに大きく貢献します。

職場での評価・待遇が向上する可能性がある

認定看護師資格を持っていることで、職場での評価や待遇が向上する場合があります。専門性が高いことが認められ、昇進や給与の面で優遇されることがあるため、モチベーションの向上にもつながります。また、認定看護師としての役割を担うことにより、職場での存在感が増します。

患者さんへのケアの質向上につながる

認定看護師資格を持っていると、患者さんに対してより専門的で質の高いケアを提供できるようになります。高度な技術と知識を駆使して、患者さん一人一人に最適な治療・ケアを提供することができるため、患者さんの健康回復を助ける重要な役割を果たします。

取得するデメリット

学費や生活費など経済的負担が大きい

認定看護師資格を取得するための学費や生活費などの経済的負担は、看護師にとって大きなデメリットとなる場合があります。奨学金制度を利用する方法もありますが、自己負担が発生することがあるため、計画的に準備することが重要です。

仕事と学業の両立が困難になる場合がある

認定看護師資格を取得するための学業は、現職との両立が難しい場合があります。勤務時間が長く、忙しい現場で働きながら学業を進めることは、体力的にも精神的にも負担が大きいことがあります。

資格取得後の役割にプレッシャーを感じることも

資格取得後、専門的な知識と技術を活かして患者さんの治療に携わることになりますが、その役割にプレッシャーを感じることもあります。患者さんの命を預かる責任感が強くなるため、精神的な負担を感じる場合があることも理解しておく必要があります。

まとめ

認定看護師になるためには、基本の看護師資格を取得した後、特定の分野での経験や知識を深めることが不可欠です。専門性が高まることで、より患者さんに寄り添ったケアを提供でき、やりがいを感じながら充実したキャリアを築くことができます。将来の就職活動に向けて、自分の志向や目標に合わせたステップを着実に進めていきましょう。

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